高齢者の栄養不足に注意!リスクと原因を知って効果的な対策を

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年齢を重ねるにつれ、「食が細くなってきた」と感じている人は少なくないでしょう。
1日3回の食事で必要な栄養素を十分に摂れていない高齢者も多いといわれます。
「年だから仕方ない」と諦めず、これからの人生をより充実したものにするために、栄養不足が招くリスクをきちんと理解し、食事との向き合い方を見直しましょう。

高齢者が栄養不足になるとどうなる?

あなたは、日本に住んでいる65歳以上の高齢者の2割近くが「低栄養傾向」にあることをご存知でしょうか。低栄養とは「栄養失調」のことで、身体に必要な栄養素が不足している状態です。

低栄養かどうかの判定には、一般的にBMI(肥満度を表す体格指数)を用います。BMIは【体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)】で計算し、高齢者では【BMI≦20kg/m2】が低栄養傾向の基準とされています。

例えば、身長155cm・体重50kgの人のBMIは約20.8kg/m2です。このくらいだと痩せているようにも見えませんが、体重が2kg減るだけでBMIは20 kg/m2以下に。低栄養傾向の高齢者は、サルコペニアやフレイル、骨粗しょう症などによって、要介護のリスクが高くなるといわれています。

サルコペニアは全身の筋肉量と筋力が低下した状態を指し、フレイルは心身が衰えた状態のことです。筋力が落ちると疲れやすくなるため活動量が減り、骨粗しょう症やフレイルの原因になります。ちなみに、若い頃に比べて身長が2cm以上低下している場合は、骨粗しょう症の黄色信号だとされています。

健康で長生きするには、低栄養を防ぐことが重要です。そのためにも、1日1回は体重を測り、BMIが20 kg/m2以下にならないように、食生活を見直しましょう。

粗食志向と老化現象が低栄養の主な原因

40歳以上になると生活習慣病の心配が増えるため、痩せているほうが良いと思っている人が少なくありません。特に仕事をリタイアして家でのんびり過ごしている高齢者では、粗食で良いと考えがちです。

しかし、加齢とともに消化吸収機能が衰えるため、若い頃と同じくらい食べていても、栄養が不足する可能性があります。特にカルシウムは吸収されにくいため、高齢になるほど積極的に摂りたい栄養素です。

カルシウムは乳製品や小魚、青菜に多く含まれていますが、カルシウムの吸収を助けるビタミンDも一緒に摂ると良いでしょう。ビタミンDは、鮭、鯖、秋刀魚などの青魚のほか、天日干ししたきのこ類に含まれています。

また、高齢になって痩せてきた人では、食べる機能の低下も目立ちます。歯や口の中にトラブルがあると、軟らかいものばかり食べるようになるため、栄養が偏りやすくなります。そうならないように、硬いものが食べにくいと感じたら、早めに歯科で相談しましょう。

必要な栄養素の量は若い人とほぼ同じ

年を取っても3食きちんと食べられる人は、元気な証拠だといわれます。そもそも「食べる」ということは、かなりの体力を要する営みです。その体力を維持するために必要な栄養素の量は、高齢者も若い人もあまり変わりません。

では、何をどれくらい食べると良いのでしょうか。とはいえ、食材やおかずの量をいちいち計るのは大変なので、ここでは大まかな1食分の目安をご紹介します。

まず意識したいのは、「エネルギー源」「たんぱく質源」「野菜」を1日3回の食事で、必ず摂ることです。さらに、1日1回は乳製品と果物を摂るのが望ましいとされています。

<エネルギー源>ごはん・パン・麺類などの主食
ごはんなら茶碗に品良くよそって1膳、パンなら6枚切りを1~2枚、うどんなら1玉が適量です。

<たんぱく質源>肉・魚・卵・大豆食品などの主菜1品+α
豚の生姜焼き、ステーキ、トンカツ、焼き魚、目玉焼きのような平たい主菜は、手のひら(パー)にちょうど収まるくらい。冷奴、ゆで卵、鶏の唐揚げなど、こんもりした主菜は、握りこぶし(グー)1個分くらいが目安です。
これらに加えて、みそ汁に油揚げや豆腐を入れたり、サラダにゆで卵やツナ缶を加えたり、パンにチーズをのせたりして、主菜とは違うたんぱく質食品を少し摂るのが理想です。

<野菜>葉物、根菜、実野菜などを組み合わせて100~130g
生の状態で、両手のひらにのるくらいの量が100~130gです。サラダならキャベツ2枚、トマト半分、きゅうり1/3本程度。火を通すとカサが減るので、食べやすくなるでしょう。

食欲がない時の対処法

高齢になると、精神的なことが原因で食欲が低下することもあります。体調が良く、顕著な体重変動がなければ、無理して食べなくても構いませんが、食べられるときに少し多めに食べるようにしましょう。食べたい気持ちを取り戻すための、きっかけとなる食べ物を知っておくことも大切です。

栄養状態の良い元気な高齢者は、旬の食材や行事食を取り入れるなど、日々の食事を楽しんでいます。また、柑橘類や酢で酸味を付けたり、だしを濃い目にすると、薄味でもおいしく食べられ、食欲が増すのでおすすめです。

管理栄養士・食育インストラクター 2000年からライター・編集者としてメディア制作に従事。業務を通じて食と健康に興味を持ち、2017年に管理栄養士資格を取得。現在は人間栄養学に基づいた健康記事の執筆活動を中心に、健康相談業務にも携わる。

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