
卵は良質なたんぱく質を豊富に含み、完全栄養食品と呼ばれています。
実際にはビタミンCと食物繊維は含まれませんが、ご存じない方も多いのではないでしょうか。
同様に、食べ方もあまりに身近すぎて意識していないかもしれません。
卵は筋肉だけでなく、丈夫な骨をつくるためにも毎日食べたい食品のひとつ。
この機会に正しい食べ方を考えてみましょう。
卵1個で1日に必要なたんぱく質の約10%が摂れる
良質なたんぱく質が多く、調理も簡単な卵。筋肉の成長や維持のために、毎日1個は食べるようにしている方も多いでしょう。卵の大きさにもよりますが、M寸(約50g)の卵1個には、約6.1gのたんぱく質が含まれます。
『日本人の食事摂取基準(2020年版)』によれば、1日あたりのたんぱく質摂取量は、18歳以上の男性で60〜65g、女性では50gが推奨されています。運動をしている人はもう少し多めに摂ったほうが良いですが、一般的な生活をしている健康な大人では、M寸の卵1個で、1日に摂りたいたんぱく質量の約10%を摂れることになります。
ただし、卵は卵黄と卵白で、たんぱく質量が異なります。卵黄は可食部100gあたり16.5g、卵白は10.1gです。卵1個(M寸)に換算すると、卵黄は約16gなので、たんぱく質量は約2.6g、卵白は約34gなので、たんぱく質量は約3.4gとなります。
たんぱく質の摂取量についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
卵のたんぱく質が「良質」と言われる理由

卵1個でたんぱく質の推奨量の約10%が摂れるからといって、卵を10個食べればOKというわけではありません。たんぱく質にもたくさんの種類があり、含まれるアミノ酸が違います。
そもそも、たんぱく質は20種類のアミノ酸が多数結合したもの。食事で摂ったたんぱく質は、胃や腸で結合が切り離され、アミノ酸として吸収されます。そのアミノ酸を使って、筋肉や骨、皮膚、髪、血液などのたんぱく質がつくられるのです。
つまり、人間の体内で実際に利用されるのは、たんぱく質ではなくアミノ酸。20種類のアミノ酸のうちどれか1種類でも欠けると、体内で必要なたんぱく質を合成できない可能性があります。特に「必須アミノ酸」と呼ばれる9種類のアミノ酸は、食事から十分に摂取しないと不足してしまうため、必須アミノ酸をバランスよく含むことが「良質なたんぱく質」の条件です。
必須アミノ酸のバランスは「アミノ酸スコア」という指標で表され、「100」を上限として高いほど良いとされています。卵は「アミノ酸スコア100」なので、良質なたんぱく質食品と言えるでしょう。
また、肉や魚、牛乳・乳製品、大豆食品も「アミノ酸スコア100」。それだけを見ると卵と同じですが、どのアミノ酸がどれだけ含まれるかは食品によって異なります。同じ食品ばかり食べていると、体内のアミノ酸の種類や数に偏りができてしまうため、たんぱく質はいろいろな食品から摂るほうが良いでしょう。
たんぱく質以外の栄養素にも注目!
卵以外にも良質なたんぱく質食品はいろいろありますが、卵を食べるメリットは、たんぱく質以外にも多くの栄養素をまとめて摂れること。卵には「ビタミンB群」がすべて含まれるほか、骨の健康に欠かせない「ビタミンD」や「カルシウム」も含まれています。
ビタミンB群は、体内でたんぱく質を合成する際に必要な栄養素です。また、糖質や脂質をエネルギーに変える反応にも関わっています。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける栄養素で、日光を浴びると体内でも合成できますが、日焼けを避ける女性は不足しがちです。
特に卵黄はビタミンDの供給源として重要。カルシウムやビタミンB群も、卵白より卵黄に多く含まれています。さらに卵黄は、抗酸化作用のある「ビタミンA」や「ビタミンE」、血液の材料となる「鉄」、細胞分裂や免疫に関わる「亜鉛」も豊富です。
要するに、卵黄のほうが身体に良い成分が多く含まれますが、脂質も約34%含まれるのでカロリーは高め。卵1個(M寸)のカロリーは約71kcal、卵白1個分だと約15kcalです。ダイエットには卵白のほうが良いと思うかもしれませんが、骨密度や筋肉を維持するために、卵黄も一緒に食べることをおすすめします。
卵は1日何個まで?コレステロールは大丈夫?

卵を食べるうえで、コレステロールが気になっている方もいるでしょう。コレステロールも脂質の一種なので、卵黄に多く含まれています。
脂質異常症の重症化予防の目的からは、コレステロールは1日200mg未満にすることが望ましいとされています。卵1個(約50g)には約210mgのコレステロールが含まれるため、コレステロールが高めの人は1日1個が目安となるでしょう。
一方、健康な人では1日2〜3個食べてもコレステロール値が上がることはないとされています。コレステロールの70〜80%は肝臓で合成されており、コレステロールを食事でたくさん摂ると、体内で合成される量が減るからです。
コレステロールが高くなる主な原因は、加齢によるホルモンバランスの乱れや運動不足、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の摂り過ぎだと言われています。コレステロールが気になる方は、卵を控えるだけでなく、全体的な食生活や運動習慣を見直すことが大切です。