【医師監修】筋肉だけじゃない!たんぱく質が骨にとって重要な理由

FacebookTwitter

たんぱく質は筋肉の材料となる栄養素ですが、丈夫な骨をつくるうえでも欠かせません。
今回は、骨太な未来のために知っておきたい、骨とたんぱく質の関係について掘り下げます。

たんぱく質と骨の深い関係

人間の身体は、水分を除くと約50%がたんぱく質でできています。特に筋肉は約80%がたんぱく質なので、「たんぱく質=筋肉」のイメージが強いかもしれません。しかし、カルシウムの塊のように見える骨も、約35%はたんぱく質で、残りの約65%がカルシウムやリンなどのミネラルです。

骨はたんぱく質の周りにミネラルが付着したもので、よく鉄筋コンクリートの建物に例えられます。たんぱく質が鉄筋、ミネラルがコンクリートです。鉄筋がしっかりしていないと、いくらコンクリートで塗り固めても丈夫な建物にはなりません。

ところで、ミネラルがコンクリートに例えられるのは何となく理解できるけれど、たんぱく質が鉄筋といわれても、ピンとこない人が多いでしょう。たんぱく質には色々な種類があり、それぞれ性質や形状が異なります。骨のたんぱく質は主に「コラーゲン」と呼ばれる繊維状のたんぱく質です。コラーゲン繊維は鉄筋のようにしなやかで、引っ張りに強いという特徴があります。

また、骨のたんぱく質で近年注目されているのが「オステオカルシン」です。オステオカルシンは骨芽細胞(骨をつくる細胞)から分泌され、骨の中に存在するほか、血液中にも流れ出ます。それが生活習慣病や認知機能の改善などに関わっていることが分かり、「若返りホルモン」と呼ばれているのです。

オステオカルシンについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

コラーゲンを摂れば骨が強くなる?

コラーゲンは骨のためというより、美容のために摂っている人が多いのではないでしょうか。サプリメントや食品からコラーゲンを摂ると、胃や腸で小さく分解され、アミノ酸やペプチド(数個のアミノ酸が結合したもの)として吸収されます。これはコラーゲン以外のたんぱく質も同様です。

たんぱく質はアミノ酸がたくさん結合したものですが、吸収される際に結合が切れて、アミノ酸やペプチドになります。そのアミノ酸を使って、新しく別のたんぱく質が体内で合成されるのです。

骨や肌のコラーゲンもたんぱく質なので、体内でアミノ酸からつくられます。口から摂ったコラーゲンが、そのまま骨や肌のコラーゲンになるわけではないのです。そう考えると、コラーゲンを意識して摂らなくても、たんぱく質を多く含む肉や魚、卵、乳製品、大豆などの食品を十分に摂れば良いと分かります。

ただし一方で、コラーゲンが分解されてできるペプチドを摂ると、体内でコラーゲンの合成が促される可能性も報告されています。コラーゲンを合成する力は加齢とともに衰えるため、毎日の食事で必要なたんぱく質を摂ったうえで、サプリメントを活用すると良いかもしれません。

たんぱく質の必要量は20代も60代もほとんど同じ

1日に必要なたんぱく質の摂取量は、一般的な成人で体重1kgあたり0.8~1gが目安。筋トレなどをしている人では、体重1kgあたり1.2~1.7gとされています。

たんぱく質の摂取量についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

たんぱく質は筋肉だけでなく、骨づくりにも欠かせないため、骨が大きくなる成長期は、たんぱく質とカルシウムの必要量が増えます。では、大人になって成長が止まったら、減らしても良いのでしょうか。

答えは「No(ノー)」です。
骨は大人になっても毎日つくられており、約3年で全身の骨が入れ替わるといわれています。日々、古くなった骨が壊され、そこに新しい骨がつくられるのです。その材料となるたんぱく質とカルシウムの必要量は、20代も60代もそれほど変わりません。高齢になると粗食で良いと考えがちですが、加齢によって栄養素を吸収する力が衰えるため、多めに摂る必要があるのです。

骨の健康に役立つたんぱく質の摂り方

昨今、たんぱく質の重要性が見直され、手軽にたんぱく質を補給できる飲料や加工食品も増えました。その一方で、たんぱく質の摂り過ぎが骨の健康に悪影響を及ぼすといったウワサもあるようですが、2018年国際骨粗鬆症財団などによって、そのような心配はないことが結論づけられています。

一説によれば、たんぱく質を大量に摂ると血液が少し酸性に傾き、骨をつくる反応が鈍くなるとのこと。さらに、骨を壊す反応が進み、骨粗しょう症や骨折のリスクが高くなるともいわれていますが、信頼性の高い研究では、たんぱく質の摂取量と骨粗しょう症の因果関係は認められませんでした。むしろ、カルシウムの摂取量が適切なら、たんぱく質を少し多めに摂るほうが、骨の健康維持に役立つとされています。

たんぱく質は意識しないと不足しやすい栄養素だといわれますが、実際はカルシウムが不足している人のほうが多いでしょう。骨の健康には、たんぱく質もカルシウムも大事です。これらを同時に補える牛乳や乳製品を、毎日の食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

医療法人幸鷺会 森整形外科リハビリクリニック 院長 。 公益社団法人日本整形外科学会 整形外科専門医 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
管理栄養士・食育インストラクター 2000年からライター・編集者としてメディア制作に従事。業務を通じて食と健康に興味を持ち、2017年に管理栄養士資格を取得。現在は人間栄養学に基づいた健康記事の執筆活動を中心に、健康相談業務にも携わる。

コラム記事ランキング

あわせて読みたい

骨のケアには
食事+運動と日光浴!

骨の健康を維持・強化するために、カルシウムの摂取はとても大切です。
カルシウムは、体内に吸収されにくいため、摂取されても多くは排出されてしまいます。意識して食事からカルシウムを摂取する。そして、体内に吸収、定着しやすくするために日光浴、バランスの取れた食事、適度な運動も大切です。

骨代謝を改善し
手軽に骨ケア
「MBP」とは

「MBP」は、牛乳にわずか0.005%しか含まれていない希少なたんぱく質です。骨をこわす力とつくる力のバランスを調整して、骨の新陳代謝を改善してくれるのが「MBP」なのです。

おすすめリンク

プロジェクト推進