高血圧の対策として減塩を意識している方は多いと思いますが、実は、それに加えて「カリウム」の摂取も大切なポイントです。カリウムには塩分を身体の外へ出す働きがあり、血圧を下げるサポートをしてくれます。しかも近年では、このカリウムが「骨の健康」にも良い影響を与えることがわかってきました。
血圧と骨の両方をケアするカリウムの力、改めて見直してみませんか?
高血圧はカリウムで改善する!?
高血圧は、脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる病気のリスクを高める重大な生活習慣病です。特に中高年層では、年齢とともに血圧が上昇しやすくなる傾向があり、予防や改善には日々の生活習慣が重要になります。その対策として減塩が広く知られていますが、近年は「カリウム」を適切に摂ることも同じくらい注目されています。
カリウムには、体内の余分なナトリウム(塩分)を尿として排出する働きがあり、この作用によって血圧を下げる効果が期待されています。実際に、アメリカで提唱されているDASH食(高血圧予防のための食事法)でも、カリウムを多く含む野菜や果物を適切に摂ることが推奨されています。
高血圧に悩んでいる方の多くが塩分を減らすことに意識が向きがちですが、減塩に加えてカリウムを積極的に摂取することで、より効果的な血圧ケアにつながることは知っておきたい新しい知見です。
高血圧は骨が脆弱になるリスク

血圧と骨の健康は、一見無関係のように思えるかもしれません。しかし近年、高血圧の人は骨折や骨粗しょう症のリスクが高まることが、複数の疫学研究で報告されています。
血圧の高さと骨の脆弱化には、いくつかの関連要因があります。ひとつは、高血圧が腎臓の機能を低下させることで、カルシウムが尿中に多く排出されるようになることです。体内のカルシウムバランスが崩れ、骨量の低下につながる可能性があります。また、一部の降圧薬は骨代謝に影響を与える作用があることも知られています。
高血圧の人は、正常な血圧の人に比べて骨折のリスクが高い傾向があるとも言われています。中でも女性では、骨粗しょう症との関連が強いとされており、血圧の管理は骨の健康を守るうえでも意識したいポイントです。
カリウムは血圧だけでなく骨の状態も良くする!?
冒頭で示したように、カリウムは高血圧の改善が期待できますが、それだけでなく、骨の健康維持に役立つミネラルとしても注目されています。
カリウムは骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐとともにカルシウムを骨に定着させる作用もあると考えられています。
私たちの身体は、酸性に傾いた状態が続くと、カルシウムを骨から放出して中和しようとするため、骨量の減少につながることがあります。カリウムは、この過剰な酸性の状態を調整することで骨を健康な状態に保つという仕組みが考えられます。実際に、カリウムを多く摂取している人は、骨密度が高く、骨折のリスクが低い傾向があることもわかってきています。血圧と骨、その両方を支えるカリウムの力を、食生活の中でうまく活かしていきたいですね。
カリウムは腎機能への影響に要注意

血圧や骨の健康を支えるカリウムですが、摂り方には注意も必要です。特に気をつけたいのが、腎臓の機能が低下している場合です。
健康な人であれば、カリウムは腎臓から尿と一緒に排出されますが、慢性腎臓病などで腎機能が落ちていると、カリウムが体内にたまりやすくなります。その結果、血液中のカリウム濃度が高くなる「高カリウム血症」を引き起こすおそれがあります。
高カリウム血症になると、筋力の低下や不整脈などの症状が現れることもあり、重症化すると命に関わるケースもあります。また、降圧薬の中で、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(薬剤名は「スピロノラクトン」など)という種類の薬はカリウムの排出を抑える作用をもつものがありますので注意が必要です。
乳製品で骨と血圧のケアを
カリウムをはじめ、カルシウムやたんぱく質など、血圧と骨の健康を支える栄養素を効率よく摂るには、毎日の食事でバランスよく取り入れることが大切です。
おすすめなのは乳製品です。牛乳やヨーグルト、チーズには、カルシウムや良質なたんぱく質だけでなく、カリウムも比較的豊富に含まれており、ひとつの食品で複数の健康効果が期待できます。
ただし、腎機能に不安がある方や、すでに慢性腎臓病と診断されている方は、カリウムの摂取量に注意が必要です。食事内容については、医師や栄養士と相談しながら、自分に合った形で取り入れるようにしましょう。






