松本伊代さんが学ぶ「骨と美容」 顔のしわやたるみは骨密度低下のサインかも?

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骨の丈夫さを示す骨密度(骨量)は、20歳頃にピークを迎えた後、低下していきます。とくに女性は閉経後、急激に骨密度が低下。骨がもろくなると、骨のトラブルが心配になってきます。

歌手・タレントの松本伊代さんも、骨のトラブルをきっかけに、骨密度が平均より低いことがわかり、今は毎日の骨ケアに積極的に取り組んでいます。

なぜ骨は中高年になると、もろくなるのでしょう? 骨密度を保つには、どのような骨ケアが必要なのでしょう? そして、最近の研究によると骨密度の低下は顔のたるみやしわに直結していると言われますが、それはなぜ?

松本さんも気になる骨に関する疑問の数々を、整形外科医として女性の骨の健康に尽力している「ゆりクリニック」院長の矢吹有里先生にうかがいました。

(撮影:天日恵美子/ヘアメイク:井原結衣/スタイリスト:藤井享子/取材・文:角田奈穂子/構成:ボンマルシェ編集部)

松本 伊代 さん
歌手・タレント

まつもと・いよ 1965年、東京出身。歌手・タレント。1981年、『センチメンタル・ジャーニー』で歌手デビュー。 日本レコード大賞新人賞をはじめ、多くの音楽新人賞を受賞。 以降、歌手活動のほかにバラエティなどで活躍。1993年、タレントのヒロミさんと結婚。2男の母でもある。今年10月には、 「松本伊代 Live 2024 “Journey” Tokyo Lover」と題した単独コンサートを、10月12日、13日の2日間、東京・大手町三井ホールで開催予定。

矢吹 有里 さん
ゆりクリニック院長・整形外科医

やぶき・ゆり 東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大学整形外科学教室に入室。各地急性期病院勤務、東京都済生会中央病院整形外科医長を経て 2017年11月、日本で初めての女性のための整形外科「ゆりクリ二ック」開院。 2022年11月、一般社団法人Orthofemme(オルトファム)設立。女性の体をトータルでサポートする場を提供している。 日本専門医機構整形外科専門医。日本骨粗鬆症学会認定医 日本抗加齢医学会専門医 日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医。日本整形外科学会認定リウマチ医。

女性の骨密度低下の原因は“骨代謝バランス”にあり!

松本伊代さん(以下、松本さん) 2022年に骨のトラブルがあった際に、X線を使って骨密度を調べる検査を初めて受けました。その結果、同世代の女性より骨密度が低いことがわかり、「まさか私が」と、すごくショックを受けたんです。体は細いですけど、人間ドックで骨密度を調べる超音波検査では問題がなかったから……骨の健康を気にしなければならないのは、私よりもっと年齢の高い世代の方だと思っていたんですよね。

矢吹有里先生(以下 矢吹先生) 骨は「骨代謝」といって、肌と同じように毎日、古い骨を壊す作業と新しい骨を作る作業を繰り返しています。この代謝のバランスが崩れ、失われた骨を十分に補えなくなると、骨量の減少、つまり骨密度が低下していきます。そして、骨代謝に大きな影響を与えているのが、女性ホルモンの1つ、エストロゲンです。卵巣から分泌されるエストロゲンには、骨が代謝をするときに、骨からカルシウムが過剰に溶け出すのを防ぐ働きがあるのです。

骨の丈夫さを示す骨密度が、一生のうちでもっとも高いのは、女性が15~18歳頃、男性が20歳前後なんですね。それから40代半ばまでは、骨密度が保たれます。40代後半から減少していくのですが、女性の場合は、閉経を境に急激に骨密度が下がります。

なぜなら、更年期に近づく頃から卵巣の働きが衰え、閉経後はエストロゲンの分泌量が大きく減ってしまうから。この現象によって骨代謝のバランスが悪化してしまうんです。もちろん、男性も加齢とともに骨密度は減少しますが、女性のほうが減少量は顕著ですね。

松本さん だから、女性は特に注意しないとダメなんですね!

出典:清野佳紀ら「薬の知識Vol.43,No10(1992)」(株)保健同人社より(一部改変)

顔のたるみやしわは、骨密度低下のサインかも

矢吹先生 骨密度の低下は、美容にも関わるんですよ。骨密度の低下が顔の骨でも同じように起きるからです。

松本さん えっ? 顔の骨なんて意識したことはありませんでした。

矢吹先生 全身の骨のなかで、最初に骨密度が低下し、萎縮するのが顔の骨です。顔の骨は、骨が太い腰や足よりずっと繊細で薄く、目や鼻、口とたくさん穴が開いています。骨密度が低下すると、顔の骨の穴が大きくなり、薄くなってきます。そうなると、骨につながる靱帯がゆるみ、脂肪や筋肉も委縮して、表面をおおっている皮膚がたるんだり、しわも目立つようになったりしてしまうのです。

松本さん 顔の骨量を増やすことはできないんですか?

矢吹先生 残念ながら、顔の骨量だけを集中的にケアすることはできません。でも、体全体の骨ケアをすることが、顔の骨のケアにもつながりますよ。

まさか自分が!? を防ぐためにも定期的に検査を

松本さん 私が人間ドックで受けた骨密度検査は、超音波を使った検査でした。1回目の骨トラブルのときには尿検査だけでした。骨密度を測る検査には、他にどのような方法があるんでしょうか。

矢吹先生 超音波検査や尿検査は、将来の骨の健康リスクをふるい分けるスクリーニング検査です。より詳しい検査を受けたほうがいいかどうかを調べるのが目的ですし、体のごく一部を調べるので、全身の骨密度と必ずしも相関しないことがあります。正確に測るには、やはり背骨や大腿骨など、トラブルが起こりやすい部位に微量のX線を当てて調べる「DXA(デキサ)法」がおすすめです。検査に痛みはありませんし、数分で終わります。骨密度が低下する更年期以降の方は、年に1度はDXA法で調べて欲しいです。

松本さん 私も母も骨のトラブルを経験しているので、姉も心配になって、私と一緒にDXA法を受けているんです。姉の骨密度は平均の範囲内でしたが、姉妹で骨の健康を考える、よいきっかけになりました。祖母や母親、姉妹が骨密度が低い場合、自分もなりやすい、ということはあるのでしょうか?

矢吹先生 じつは大いにあります。様々なリスク因子に比べ、遺伝的要因は約2倍のリスク(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年度版」より)があります。祖母や母親、姉妹などの身内に骨トラブル経験がある際には、とくに意識して毎日の骨ケアに取り組んでいただきたいです。

松本さん 骨密度と体の姿勢も関係があるんですよね。おばあちゃまで、とても姿勢がいい方は、遺伝的に骨が丈夫なことに加えて、生活習慣も関係しているんでしょうか?

矢吹先生 そうですね。姿勢が悪いと脊椎(背骨)に負担がかかって、将来、骨のトラブルにもなりかねません。姿勢がよいお年寄りは、遺伝的要因に加え、正しい姿勢を意識して筋肉を鍛えるなどの生活習慣もしっかりされていることが多いです。

すぐできる!骨ケアは食生活から

松本さん 将来の骨トラブルのリスクを減らすために、どのような骨ケアをする必要があるのでしょうか?

矢吹先生 まずは食事で骨代謝に必要な栄養を毎日きちんととることです。主な栄養素は、骨の主成分となり、形成を促進するカルシウム、小腸の中でカルシウムの吸収を促すビタミンD、骨の質を高めるコラーゲンを増加させるビタミンKがあります。それに加えたんぱく質なども骨の代謝に欠かせません。

松本さん そういえば、私は、入院したときの病院食が参考になりました。とくに印象的だったのは、毎日、食事に出たブロッコリーです。「骨にいいんだな」と初めて知りました。納豆やきくらげ、海藻類もいいんですよね?

矢吹先生 とてもいいです。あとは体の基になる、たんぱく質もとても大切です!カルシウムやビタミンDをより効果的に取り込むためには、たんぱく質が欠かせないんですよ。 

松本さん カルシウムと言えば、乳製品も欠かせないですよね。私は、少しでもよいものをと考えて、コップ2杯で1日のカルシウムがとれるタイプの乳飲料を飲んでいます。CMで見かけたドリンクも飲むようになりました。食が細く、たくさん食べられないので、乳製品や乳飲料などで手軽にカルシウムなどの栄養がとれるのは、とても助かります。息子たちも心配してくれて、「小魚がいいよ」とおやつ用にプレゼントしてくれることもあるんですよ。

大切なのは「骨代謝」のいい体を保つこと!

松本さん 体をつくる基本は、やっぱり食生活なんですね。

これからも心がけていきたいと思います。運動に関してはどうでしょう?

矢吹先生 体も積極的に動かしてください。息が弾むくらいのウォーキングを週2~3回、歩数なら6,000~8,000歩が目安です。スクワットなどの筋トレも大切です。筋肉が鍛えられると、その刺激で骨も丈夫になっていきます。重量がかかると骨が刺激されて新陳代謝が活発になるので、かかとを上げ下げする「かかと落とし」や階段を下りるのもおすすめですよ。

松本さん 今まではヒロミさん(夫)と、よく散歩はしていました。リハビリの先生に教えていただいた、かかと落としやスクワットなどの運動も続けています。でも、それだけでは足りないんですね。これからは、もう少し息が弾むくらい早足で歩くように意識してみます。あとは日光浴もしています。

矢吹先生 日光浴は、カルシウムの吸収を助けるビタミンDをつくるのに役立ちますので、ぜひ。松本さんのお仕事には大切なダンスも骨にはとてもいい運動になりますよ。

松本さん ダンスのレッスンのあとに、乳製品を飲むのもよさそうですね。じつは私、骨密度の数値がなかなか上がらないことが悩みなんです。

矢吹先生 わかります。骨密度アップに取り組んでいる皆さん、同じ悩みを持っています。でも、骨密度の数値が思うように上がらなくても、焦らないでください。急には上昇しません。骨密度の変化はゆるやかなのです。

松本さん 時間がかかるんですね。

矢吹先生 ええ。大切なのは、高齢になっても、骨代謝のいい体を保つことです。骨密度の数値につい目がいきがちですが、食生活をはじめとする生活習慣を意識していけば、いくつからでも骨代謝のバランスがよくなっていきます。毎日の骨ケアを地道にコツコツ続けていれば、長い目で見れば健康寿命に役立っていると考えてください。まずは、毎日の食生活の見直しから!

松本さん 食生活からなら、すぐに始められそうで嬉しいです。先生の言葉を聞いて、ほっとしました。骨の健康はお年寄りの問題ではなく、私の世代でも十分に気をつけなければならないんですね。私も骨のトラブルをきっかけに、早く気づくことができたので、よかったのかもしれません。今からしっかり骨をケアしていけば、将来の健康につながると信じて、これからも毎日、頑張ります。

知っておきたい! 「骨と美容」

骨は毎日、肌のターンオーバーのように古い骨を壊し、新しい骨を作る新陳代謝を繰り返しています。この新陳代謝を「骨代謝」と呼びます。骨の細胞は古くなると、「破骨細胞」によって溶かして壊されます。 それと同時に、「骨芽細胞」が新しい骨細胞を作っています。骨が壊される 「骨吸収」と骨がつくられる「骨形成」のバランスが取れているときは、骨の丈夫さを示す「骨密度」は保たれています。ところが、加齢や女性ホルモンの減少、カルシウムの不足などで、代謝がアンバランスになり、失われた骨量を十分に回復できないと、骨密度の減少が始まってしまうことも。骨密度の低下は美容にも関わりますが、骨の場合は気になる部分を集中的にケアすることはできません。毎日コツコツと体全体をケアしてあげることがおすすめです。

「骨太な未来プロジェクト」は、人生100年時代の今、子どもから大人まで、 元気で活発な日本にしていきたいという思いから、やりたいことに挑戦する人を骨の健康を通じて応援するプロジェクトです。

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