名城大学女子駅伝部に学ぶ、疲労骨折を防ぐ「骨ケア」習慣

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「全日本大学女子駅伝」で7連覇、「富士山女子駅伝」で6連覇を達成してきた名城大学女子駅伝部。2024年は惜しくも連覇が途切れましたが、再び頂点を目指して挑戦を続けています。

今回は、そんな名城大学女子駅伝部の強さのヒミツを、全3回シリーズでご紹介。「骨ケア」、「食事」、「トレーニング」の3つの視点から迫ります。

シリーズ第1回のテーマは「骨ケア」対策。長距離を走るアスリートにとって避けて通れない疲労骨折の予防や体調管理の課題に、どのように向き合っているのでしょうか。スポーツ医学の立場からチームを支える梅田教授と、長年にわたり選手たちを指導してきた米田監督にお話を伺いました。

薬学部 梅田 孝(うめだ たかし)教授
大分県中津市出身。1992年、日本体育大学大学院体育学研究科スポーツ運動学専攻修士課程修了、2001年、医学博士(弘前大学)。弘前大学大学院医学研究科准教授を経て2013年4月から現職。所属学会は日本衛生学会、日本体力学会、体力・栄養・免疫学会など。

女子駅伝部 米田 勝朗(よねだ かつろう)監督
宮崎県出身。日本体育大学卒、同大大学院体育学研究科修士課程修了。
学生、大学院生時代は陸上部マネージャー、箱根駅伝コーチ。1995年に名城大学に助手として赴任、女子駅伝部を設立。講師、助教授、准教授を経て法学部教授。弘前大学大学院医学研究科博士課程修了、2014年医学博士(弘前大学)。専門は運動方法学。

疲労骨折は、アスリートの大敵。故障ゼロが最強チームを支える

「これまで指導してきた中でも、今年のチームは最も手応えのあるトレーニングを積めています」

そう語るのは、名城大学女子駅伝部を創部から30年以上率いてきた米田監督です。

「昨年は、大会前に故障で走れない選手がいました。故障が出るということは、自己管理ができていないということです。それまで勝ち続けてきた選手も、一度負けたことで意識が変わりました。

今年はとにかく体のケアを徹底しています。選手たちは練習前に1時間かけてストレッチを行い、練習後も就寝前までそれぞれが自分に合った方法でケアを続けています。そうしたルーティンを続けた結果、今年は故障者がほとんど出ていません。そのぶん、質の高い練習をしっかりできています」

自主性を重んじているため、選手たちは体重管理なども厳しく指導されることはありません。その分、一人ひとりが自分の体と真剣に向き合い、自発的にケアを行う姿勢が求められます。
2024年に連覇が途切れたことは、選手たちにとって悔しい経験でしたが、心のどこかにあった慢心を見つめ直し、体のケアに対する意識をいっそう高めるきっかけとなりました。

30年の指導経験をもとに、選手が育つ環境について語る米田監督

日々の積み重ねに加え、このチームでは長期的な視点での健康管理にも力を入れています。

女性アスリートには「三主徴」と呼ばれる、エネルギー不足・無月経・骨粗鬆症の3つの健康課題が見られます。これらは互いに関連しており、たとえばエネルギーの摂取量が不足すると月経が止まり、その状態が続くと骨密度が低下し、疲労骨折や将来的な健康リスクにつながることもあります。

駅伝は、遠くまで体を運ぶ競技。「軽さが有利」という事実はあるものの、軽いだけでは限界があり、長く競技を続けることはできません。このチームでは、体重管理と健康維持のギリギリのバランスを見極めながら、「勝つための強い体づくり」に取り組んでいます。

毎日の「骨ケア」が、思い切り走る自信に

そうした体づくりの一つとして、注目しているのが骨のケアです。疲労骨折は一度起こしてしまうと、復帰までに3ヶ月、本来のパフォーマンスを取り戻すまでには1年近くかかることも。競技人生に大きな影響を与えかねません。

名城大では2015年から「MBP」(Milk Basic Protein。雪印メグミルクが発見し、その頭文字をとって「MBP」と命名)を取り入れています。「MBP」は、牛乳に0.005%しか含まれていない希少なたんぱく質で、骨の生まれ変わりを改善する働きがあります。もともとは中高年の骨密度対策として注目されていた成分ですが、現在ではアスリートの骨の強度を高める成分としても期待されています。

「古い骨を壊す『骨吸収』と骨をつくる『骨形成』を繰り返して、骨は生まれ変わっています。高齢になると吸収が形成を上回って骨密度が下がり、骨粗鬆症になります。一方でアスリートは、一般の人より骨密度が高い場合でも、走ることで骨にかかる負荷が大きくなり、サイクルが速まりすぎて骨質が悪化し、骨折のリスクが高まることがあります」(梅田教授)

スポーツ現場での体づくりや健康管理を語る梅田教授

選手たちが「MBP」を毎日継続して摂取した結果、それまで毎年2割ほどいた疲労骨折の選手が、2015年・2016年と2年連続でゼロに。さらに、名城大と雪印メグミルクとの共同研究では、骨質の状態を示す指標「ペントシジン」の数値が改善するなど、科学的にも有用性が確認されました。

もちろん、「MBP」だけに頼るのではなく、食事、トレーニング前後のケア、休養といったベースを整えたうえで取り入れることが重要です。これは米田監督も繰り返し選手に伝えているポイントです。

「やるべきことをしっかりやった上で『MBP』を摂る。それによって、思い切って負荷の高い練習にも挑戦できるし、安心して競技に取り組めるようになります」(米田監督)

疲労骨折を防ぐには、自分の体と向き合うことから

昔ながらの感覚に頼る指導ではなく、科学的なデータに基づくアプローチを早くから取り入れてきたことも特徴です。定期的に行うメディカルチェックでは、血液検査や骨密度測定、心理テストなどを実施して、疲労や栄養状態、メンタルの変化などを細かく把握。小さな不調も見逃さず、早い段階で対策できる体制を整えています。

さらに、選手一人ひとりのコンディションを長期的に分析し、その結果をもとにトレーニング内容や食事を調整します。こうした取り組みが、骨への過剰な負荷や栄養不足を未然に防ぐことにもつながっています。

また、入部した選手にはデータを読む力を身につけられるよう、数値の見方や活用方法も指導。選手が自分の体の状態を客観的に理解し、必要な対策を自ら考えて実行できる力を養います。

「強い選手ほど、自分の体に対して敏感ですし、意識も高い。だからこそ、根拠のある数値を見ながら自分で考えられるようにしていくことが大切です」(梅田教授)

今日からできる「骨ケア」で、強い体をつくろう

骨のケアは、日々の小さな積み重ねから始まります。
自分の体を知り、それに合ったケアを続けていくことが、疲労骨折や筋肉の損傷といったケガ予防につながり、本番で最大限の力を発揮することにもつながります。そして、競技人生を長く続けていくためにも、欠かせない大切な習慣です。

未来の自分のために——今日から「骨ケア」、始めてみませんか?

「骨太な未来プロジェクト」は、人生100年時代の今、子どもから大人まで、 元気で活発な日本にしていきたいという思いから、やりたいことに挑戦する人を骨の健康を通じて応援するプロジェクトです。

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「MBP」とは

「MBP」は、牛乳にわずか0.005%しか含まれていない希少なたんぱく質です。骨をこわす力とつくる力のバランスを調整して、骨の新陳代謝を改善してくれるのが「MBP」なのです。

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